中国のスタートアップ企業DeepSeekが、人工知能(AI)の競争力と米国のリーダーシップに対する懸念を示したことを受け、米国のテクノロジー株がプレマーケットで急落しました。このニュースは、テクノロジー株全体の世界的な売却を引き起こし、主要な市場に衝撃を与えています。
米国のテック株が大幅下落
AI分野のハードウェアリーダーであり、AIブームの恩恵を大きく受けてきたNvidiaの株価は、米東部標準時の午前5時11分時点でプレマーケットにおいて9.84%下落しました。この下落は、DeepSeekがもたらす競争と市場の不確実性に対する懸念を反映しています。米国メディアが伝えるところによれば、他の主要な米国テクノロジー企業も市場の不安により大幅な下落を見せています。
ヨーロッパとアジア市場も打撃を受ける
この売却の動きは米国にとどまらず、ヨーロッパやアジアのテクノロジー株にも波及しました。ヨーロッパでは、オランダの半導体企業ASMLとASM Internationalの株価がそれぞれ10.59%と14.94%の大幅下落を記録しました。一方、アジア市場では、日本の半導体関連株が軒並み下落し、投資家心理に広範な影響を与えました。この一連の動きは、DeepSeekがAI技術で急成長を遂げたことが、世界の主要プレイヤーに挑戦状を叩きつけたことを示しています。
DeepSeekの革新的な取り組み
市場の混乱を引き起こしたのは、DeepSeekの最近の技術的なブレークスルーです。同社は昨年12月末、わずか2カ月間で開発し、600万ドル(約7.8億円)未満のコストで実現した無料のオープンソース大規模言語モデル(LLM)を公開しました。この開発費は、西側のテック大手が同様のAIモデルを開発するために必要な膨大な予算と比較すると、格段に少ないものです。また、同社は先週、OpenAIの最新モデルを複数の第三者テストで上回ったとされる推論モデルを発表しました。これらの成果は、米国のテクノロジー企業がAIモデルやデータセンターに巨額の投資を行っている現状に疑問を投げかけています。
専門家の見解
DeepSeekの急成長は、AI分野におけるリソース配分のあり方について新たな議論を引き起こしました。レイモンド・ジェームスの半導体アナリストであるスリニ・パジュリ氏は、「DeepSeekは米国の大手ハイパースケーラーほどの計算資源を持っていないにもかかわらず、非常に競争力のあるモデルを開発したようだ」とコメントしています。この発言は、欧米企業による現在の投資戦略の有効性や、市場を揺るがす小規模で敏捷な企業の台頭に対する懸念を浮き彫りにしています。
AI業界における勢力図の変化
DeepSeekの成果は、AI業界の勢力図のバランスと、西側テック大手が採用する多額の投資戦略の持続可能性についての議論を再燃させました。リソースが限られた中国のスタートアップが、競争力のあるAIモデルを生み出せるという事実は、世界のテックリーダーにとって大きな警鐘となっています。AI競争が激化する中、業界は支出慣行の見直しや、競争力を維持するための新たな優先事項を模索することになるでしょう。