クアルコムは、次世代ウェアラブル向けプラットフォーム「Snapdragon W5+ Gen 2」と「W5 Gen 2」を正式に発表した。スマートフォン向けSoC(システム・オン・チップ)で培った性能・効率・接続性の強みを、成長が期待されながらも普及が限定的なスマートウォッチ市場に投入する。
シニアディレクターのジョン・カーリ氏は「W5+ Gen 2は、スマートフォンでの経験を基盤に、性能、効率、接続性を一体化したもの。まだ決定的な転換点を迎えていないウェアラブル市場を前進させる」と語った。
主な特徴
- 4nmプロセス採用:性能向上と省電力を両立し、デバイスの小型化を実現。
- Location Machine Learning 3.0:都市部でのGPS精度を最大50%改善。
- Optimized RF Front End:約20%の省スペース化と低消費電力化。
- NB-NTN衛星通信対応(業界初):セルラーやWi-Fi圏外でもSOSメッセージ送信が可能に。
カーリ氏は「ウェアラブルを“ただのフィットネストラッカー”から“信頼できる相棒”に変える技術だ」と説明。特に衛星SOS機能は、登山や旅行、災害時などに命を守る可能性があると期待される。
初採用はPixel Watch 4
最初に搭載される製品は、Googleの「Pixel Watch 4」。ハードウェアと最新Wear OSを統合的に設計できるGoogleが、W5 Gen 2の性能を最大限引き出すショーケースとなる見込みだ。
Androidウェアラブル市場は、これまで断片化やApple Watchの圧倒的存在感により普及が遅れていた。だが、Pixel Watch 4が成功すれば、新たな標準を提示できる可能性がある。
Appleとの違い
AppleのS9チップは垂直統合により「統一感と完成度」を武器にしているのに対し、クアルコムのW5+ Gen 2は「柔軟性と多様性」を重視する戦略だ。パートナー各社が独自性を打ち出せる一方で、ソフトとハードの調和が課題となる。
今後の展望
クアルコムはスマートフォン、PC、自動車、IoTなど幅広い分野で技術を展開しており、ウェアラブルを「単体デバイス」ではなく「マルチデバイス環境の一部」として位置づける。
「時計はアクセサリーではなく、デバイスや環境と会話する存在になる」とカーリ氏は語った。
Snapdragon W5+ Gen 2とW5 Gen 2の登場は、ウェアラブル市場の転換点となるかもしれない。Apple Watchの牙城に挑むAndroid勢にとって、大きな武器となりそうだ。