NVIDIAが米国の新AI法案に異議
米半導体大手 NVIDIA が、米国防権限法(NDAA)の一部として提案された 「GAIN AI法案(Guaranteeing Access and Innovation for National Artificial Intelligence Act)」 に対して公に批判を展開しました。
同法案は、米国がAI市場での優位性を維持することを目的に、先端AIチップの国内供給を優先する内容を含んでいます。まだ成立していませんが、その規制色の強い条項は国内外で大きな議論を呼んでいます。
NVIDIAは業界フォーラムで次のように述べました。
「存在しない問題を解決しようとするこの法案は、世界中のあらゆる産業における競争を制限することになる」
GAIN AI法案の狙いと懸念
法案の目的は、AI関連のサプライチェーンを保護し、国外依存を減らすことにあります。米国商務省に対して「総処理能力が4,800以上の高性能AIチップの輸出ライセンスを拒否し、米国内で需要が満たされない限り輸出を制限すべき」と明記しています。
支持派は、これにより 国家安全保障 と 経済競争力 を確保できると主張。特にロビー団体「Americans for Responsible Innovation(ARI)」は「最先端のAIチップは米国のAI産業を次世代へと導くジェットエンジンだ」と述べています。
一方、NVIDIAを含む反対派は、過度な保護主義が イノベーションを阻害 し、米国内企業にも不利益をもたらすと懸念しています。
過去の「AI拡散規則」との類似点
NVIDIAはまた、2025年1月に施行された 「AI拡散規則(AI Diffusion Rule)」 にも言及。これはバイデン政権が導入した輸出規制で、先端AIチップの国外流出を防ぐ狙いがありましたが、最終的には撤回されています。
NVIDIAは当時を振り返り、
「AI拡散規則は“終末論的なSF”に基づいた自滅的な政策だった」と強く批判しました。
現在のGAIN AI法案も同様に、 競争力を削ぐリスクがある として強い懸念を示しています。
グローバル競争の中で求められる柔軟な政策
中国をはじめとする海外のAI企業が急成長する中、米国がどのように規制と競争力を両立させるかは、世界のテクノロジー市場全体に大きな影響を与えます。
NVIDIAの批判は、単なる企業防衛ではなく、イノベーションを促進する柔軟な政策設計の必要性 を示唆しています。今後の米国議会での審議結果は、AI業界の方向性を大きく左右することになりそうです。
出典: Reuters, Congress.gov, Tom’s Hardware, Gizmodo