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ETHチューリッヒ、DNA検索エンジン「MetaGraph」を開発:遺伝子解析を加速する革新ツール

DNAレンダリング。 (画像出典: Sangharsh Lohakare、Unsplash)
DNAレンダリング。 (画像出典: Sangharsh Lohakare、Unsplash)

ETHチューリッヒ、DNA検索エンジン「MetaGraph」を開発:「遺伝子のGoogle」が誕生

巨大な遺伝子データを数秒で検索可能にする画期的ツール

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)の研究チームは、**世界中のDNA・RNA配列を瞬時に検索できる新ツール「MetaGraph」**を開発しました。このツールは、DNA情報を対象とした“Googleのような検索エンジン”として機能し、従来では不可能に近かった膨大な遺伝情報の検索を短時間で実現します。

DNAシーケンシング技術は、これまでに希少な遺伝性疾患の特定腫瘍細胞内の突然変異解析などに大きく貢献してきました。特に次世代シーケンシング(NGS)の登場以降、世界規模での**SARS-CoV-2ゲノム解析(2020〜2021年)**など、驚異的な研究成果を支えています。

世界のDNAデータベース100ペタバイト超を検索対象に

現在、世界中の研究者が公開しているDNA解析データは、米国の**Sequence Read Archive(SRA)や欧州のEuropean Nucleotide Archive(ENA)などのデータベースに蓄積されています。これらのデータ量は約100ペタバイト(1ペタバイト=100万GB)**に達しており、インターネット上の全テキスト量にも匹敵する規模です。

従来、これらの巨大アーカイブを検索するには膨大な計算資源が必要で、効率的な比較・解析は困難でした。しかし、ETHチューリッヒの研究者たちはこの課題を解決。MetaGraphは、データベース内の全DNA・RNA配列を対象に、まるでインターネット検索のようにテキスト入力から数秒〜数分で一致箇所を特定できるようにしました。

ETHチューリッヒ計算機科学科のグンナー・レッチ教授は「これはDNAのGoogleのようなものだ」と説明しています。

コスト効率にも優れた革新的構造

これまで研究者はメタデータ(説明情報)を手掛かりに検索し、該当するデータを都度ダウンロードして解析する必要がありました。そのため、検索は不完全で時間もコストもかかるものでした。
一方、MetaGraphはデータを**圧縮構造(約300分の1)**にして保存し、巨大なデータ集合を効率的に索引化。**1メガベースあたり約0.74ドル(約115円)**以下のコストで大規模検索を実行可能です。

この技術は、抗生物質耐性遺伝子や**バクテリオファージ(細菌を破壊するウイルス)**などの特定にも応用が期待され、感染症研究や新たなパンデミック対応を加速する可能性があります。

オープンソース化で研究・企業への応用も期待

研究成果は2025年10月8日付で学術誌『Nature』に掲載されました。
MetaGraphは既にオープンソースとして提供されており、ウイルス・細菌・植物・動物・ヒトなどのDNA/RNAおよびタンパク質配列を網羅する検索が可能です。現在、世界中の配列データセットの約半分がインデックス化
されており、年内にはすべて対応予定とされています。

共同研究者のアンドレ・カーレス博士は、「Googleが登場した当初、誰もその用途を完全には理解していなかったように、DNA検索エンジンも今後、一般利用へと進化するかもしれない」と述べています。将来的には、個人が自宅の植物や微生物を特定する日も訪れるかもしれません。

出典: SciTechDaily

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