次にアメリカの宇宙飛行士が月に降り立つ時、彼らはプラダがデザインした宇宙服を着用します。この宇宙服は、高度な技術とプラダの独自のデザイン要素を融合させたものです。アクシオム・スペースはプラダと提携し、イタリア・ミラノで開催された国際宇宙会議で「Axiom Extravehicular Mobility Unit(AxEMU)」宇宙服を発表しました。この新しい宇宙服は、1972年12月以来初めて月に人類を送り込むアルテミスIIIミッションで、NASAの宇宙飛行士によって着用される予定です。
革新的なパートナーシップ
アクシオム・スペースのマット・オンドラー社長は、このパートナーシップの革新性を強調し、プラダとの提携により「革新的な解決策への新たな道筋が確立された」と述べました。彼は、AxEMU宇宙服が高度な技術と最先端のデザインを融合させたものであり、異業種間の新たな標準を築いたとしています。
未来の探査への高額な投資
AxEMUプロジェクトには多額の費用がかかります。NASAはアルテミスIIIミッションの技術開発の一環として、アクシオムに2億2800万ドルの契約を与えました。4人の宇宙飛行士が今回のミッションでこの宇宙服を使用しますが、アクシオムの船外活動担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ラッセル・ラルストン氏は、再利用が可能であるため、将来的にはコストが削減される可能性があると述べています。
スタイルと実用性の融合
この宇宙服は、スタイルと実用性の両立を目指しています。AxEMU宇宙服にはプラダのロゴは見当たりませんが、指揮官用スーツの赤いパイピングはプラダの「リネア・ロッサ」ラインを彷彿とさせます。この宇宙服は、ワンサイズで全ての人に対応できるように設計されており、生体モニタリング機能、HDカメラ、4G/LTE通信機能を備えています。また、アポロ計画時の宇宙服と比較して耐久性が向上しており、月の南極の恒久的に影に覆われた地域を探査するために必要な機能を取り入れています。宇宙服の肘や膝には、月面の環境からの保護のためのグレーパッチが施されており、月の埃に対する絶縁性も強化されています。
デザインと機能性のバランス
ラルストン氏は、肘と膝のパッドのグレーの色は、美学と機能性のバランスをとるための意図的なデザイン選択だと説明しています。このパッドは、柔軟性を確保しながらも、スーツと宇宙飛行士を衝撃から保護するよう設計されています(TIME)。
プラダの意外な宇宙進出
プラダの宇宙服開発への参加は、最初は軽い冗談として始まりましたが、次第に真剣な提案へと発展しました。プラダのチーフマーケティングオフィサー、ロレンツォ・ベルテッリ氏は、この協業が「ある種のジョーク」として始まったものの、現実的なパートナーシップへと成長したと語っています(ニューヨーク・タイムズ)。ラルストン氏によれば、この協業は実際に「非常に理にかなっている」とのことです。なぜなら、宇宙服は単なる技術的な装備ではなく、文化的なシンボルでもあるからです。「科学とエンジニアリングを融合させつつ、人体に合わせて設計されたアート作品でもある」とラルストン氏は強調し、バックパックが非常に堅牢である一方、スーツ部分は柔軟であり、さまざまな体型の男女に対応できる必要があると述べています。
AxEMUを通じて、アクシオム・スペースとプラダは、宇宙探査の未来を変えるだけでなく、商業宇宙産業におけるイノベーションとデザインの新たな可能性を再定義しようとしています。