KDDIは2025年1月24日、横浜みなとみらいの耐震バースにて年次災害対応訓練を実施しました。この訓練は、近年深刻化する自然災害を受け、災害時の通信復旧力を高めることを目的に、政府機関や自衛隊など多様な組織と連携して行われました。KDDIはこれまでにも大規模な災害対応訓練を毎年実施しており、さらに日本各地で約150回におよぶ小規模な実践訓練も行っています。
2024年能登半島地震からの教訓を活かす
KDDIの執行役員である山本和博氏は、過去の経験を学びに変える重要性を強調しました。彼は「2024年の能登半島地震から1年が経ち、多くの教訓を得ることができました。これらの教訓を活かし、将来の災害に備える必要があります」と語っています。今年の訓練では、大規模地震を想定した通信復旧シミュレーションが中心となり、特に能登半島地震で明らかになった課題を克服するための取り組みが注目されました。
3つの異なる環境での訓練シナリオ
訓練は、「内陸エリア」「港湾エリア」「海上エリア」の3つの環境で実施されました。それぞれのシナリオにおいて、現実的な課題を想定し、迅速な対応力を高めることが目的です。
内陸エリア
道路が寸断され、通信基地へのアクセスが困難な状況を想定。関東地方整備局が緊急車両による道路啓開を開始し、通信復旧作業がスタートしました。道路が確保された後、陸上自衛隊によって輸送されたKDDIの緊急対応チームが、Starlink衛星技術を活用した移動通信システムを迅速に設置し、通信復旧を実現しました。
港湾エリア
陸上アクセスが遮断された状況下で、船舶を利用した通信復旧訓練が行われました。KDDIのチームは、海上保安庁の巡視船から衛星機器を受け取り、地理的な障害を克服しながら物流と通信復旧を実演しました。
海上エリア
船舶が漂流物によって接岸できない状況を想定し、船上通信システムを活用した訓練が実施されました。困難な条件下でも通信を確保するための効果的な方法が試されました。
新技術とドローンの活用
訓練では、Skydio X10ドローンを使用した救助活動も行われ、被災者の迅速な発見と救助を支援しました。このような技術の統合により、ロジスティクスの効率化と対応能力の向上が図られています。また、Starlink技術の最新デモンストレーションでは、従来の通信インフラが機能しない場合でも、スマートフォンに直接接続可能な技術が披露され、大きな注目を集めました。
KDDIの未来ビジョンと災害対応力の向上
訓練は、バッテリー管理や電源供給の監視メカニズムなど、停電時でも持続可能な通信運用を支える先進技術の展示で締めくくられました。訓練参加者は、過去の災害復旧で使用された車両から最新の移動通信ステーションまで、様々な機器や技術を見学する機会も得ました。
KDDIは、増加する自然災害に対応するための通信復旧力と災害対応能力の強化に全力を注いでいます。同社の「KDDI VISION 2030」は、どのような状況下でも地域社会をつなぐことを目指しており、山本氏は「緊急時でも人々が夢を実現できる社会を創りたい」と語りました。