DJI、新型産業用ドローン「Mavic 3TA」を静かに発表:熱画像性能を強化したMavic 3Tの派生モデル
Mavic 3TA登場、Mavic 3Tを補完する新バリエーション
DJIは業界の注目を集めることなく、産業用ドローン「Mavic 3 Enterprise」シリーズに新モデル Mavic 3TA(Advanced) を追加しました。既存のMavic 3Tを置き換えるのではなく、より強化された熱画像性能を求めるユーザー向けの派生機として位置づけられています。
最大の変更点はサーマルカメラの改良です。Mavic 3TAは41.2° DFOV(対角視野角)、60mm相当の焦点距離を採用し、解像度は従来同様640×512を維持しています。これにより、Mavic 3Tの61° DFOV/40mm相当から比べると視野が狭まり、中~長距離での対象識別精度が向上すると考えられます。また、ピクセルピッチが12µmから8µmに縮小され、感度と鮮明度が向上しました。
温度測定範囲はこれまで通り–20〜150℃(高ゲイン)/最大500℃(低ゲイン)で、30HzフレームレートのVOxマイクロボロメータを採用し、スポット/エリア測定やNETD ≤50mKの性能を維持しています。
サーマル以外はMavic 3Tを継承
Mavic 3TAは熱画像性能を強化した一方で、基本性能はMavic 3Tと共通しています。
- カメラ性能:48MP広角カメラ(1/2インチCMOS, 24mm相当)、12MP望遠カメラ(162mm相当, 最大56倍ハイブリッドズーム)
- 飛行性能:最大飛行時間約45分(無風時)、同じバッテリーとプロペラ設計
- 機体サイズ:重量約920g、最大離陸重量約1,050g
- ナビゲーション:全方位ビジョンシステム+GPS/GLONASS/BeiDou、RTK対応可能
- 伝送システム:O3 Enterpriseによる安定した映像伝送
- 周辺機器互換:RTKモジュール、スピーカー、DJI RC Pro Enterpriseコントローラー、各種エンタープライズ用ソフトウェアと互換性
つまり、従来のMavic 3Tの利点を維持しながら、熱画像の解像度と識別性能を高めた“中間的選択肢”として位置づけられています。
ファームウェアとソフトウェア更新
Mavic 3TAの登場に合わせ、DJIは既存製品との互換性を確保するためのファームウェア更新を行いました。
- 機体ファームウェア:v14.02.00.22(Mavic 3TA)、v14.01.00.02(Mavic 3T/3E)
- コントローラー:v02.01.07.12
- DJI Pilot 2アプリ:v14.2.0.15
- DJI Assistant 2:v2.1.20
これにより、新モデルを既存のエコシステムにシームレスに統合でき、操縦者はアップデート後すぐに運用が可能となります。
市場への影響と位置づけ
DJIはMavic 3TAを「追加モデル」と明言しており、Mavic 3Tを継続販売する方針です。広範囲をカバーする消防や大規模測量では従来モデルの広視野角が有効である一方、電力設備点検や長距離監視、救助活動など、詳細な熱情報が求められる場面ではMavic 3TAが力を発揮すると見られます。
この動きは、他のテクノロジー業界に見られる“派生モデル戦略”に似ており、フルリフレッシュを避けつつニッチな需要を満たす手法といえるでしょう。
出典: DroneDJ