低軌道インターネット競争に本格参戦、SpaceXのStarlinkに挑む
アマゾンは、衛星ブロードバンド市場への参入を加速させるべく、インターネット衛星プロジェクト「Project Kuiper」の最初の運用衛星群を打ち上げました。
現地時間4月8日午後7時(日本時間4月9日午前8時)、フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のAtlas Vロケットにより、27機の衛星が打ち上げられました。このミッションは「KA-01(Kuiper Atlas 1)」と命名され、衛星は高度約450km、軌道傾斜角51.9度の円軌道に展開されました。
アマゾンは、「今回の打ち上げの最初の目的は、全衛星を安全に軌道上に配置し、それぞれが自立的に地上と通信できることを確認することだ」とコメントしています。
Starlinkとの競争が本格化
この打ち上げは、7,000基以上の衛星を投入してすでに70カ国以上で高速インターネットを提供しているSpaceXの「Starlink」に対抗するアマゾンの戦略的な一手となります。
「Project Kuiper」は世界中に高速・低価格のインターネットを提供することを目指す大規模プロジェクトで、最終的に3,200基以上の衛星を低軌道に配置する予定です。
今回の打ち上げは、2023年10月に同じくAtlas Vロケットで打ち上げられた試作衛星「KuiperSat-1」と「KuiperSat-2」の成功に続くもので、これらのテストにより技術的な有効性が実証されていました。
今後の打ち上げ計画と衛星性能
アマゾンは、ULA、アリアンスペース、ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンと合わせて、合計80回の打ち上げ契約を結んでおり、ULAだけでも今後46回の打ち上げが予定されています。今回のKA-01を含め、Atlas Vであと7回、より大型の「Vulcan Centaur」ロケットで38回の打ち上げが計画されています。
Kuiper衛星は、秒速7.5km(時速約27,400km)で地球を約90分で1周する低軌道に配置され、将来的には最大100Mbpsの通信速度を実現する予定です。2023年に発表されたコンパクトなユーザー端末(7インチ四方のアンテナ)を通じて、世界中のユーザーにサービスを提供する構想です。
商用サービスは2025年後半に開始予定
アマゾンは、2025年後半には商用サービスを開始する予定ですが、運用体制の整備やスケーラビリティの確保が鍵となります。業界関係者からは、「Starlinkに出遅れたKuiperに今から追いつけるのか?」という声もあり、実現力が問われる段階に入っています。
また、今回の打ち上げはULAにとっても商業打ち上げ分野での再浮上を象徴する重要なミッションとなりました。Vulcanロケットは2025年3月に国家安全保障ミッションの認証を受けており、今後は年間12回の打ち上げを目指しています。
地政学的リスクも影響か
同日に、アマゾンが中国などアジア製品の注文をキャンセルしたと報じられており、これはトランプ前大統領が課した104%の関税や、中国の報復関税(84%)の影響と見られています。こうした地政学的緊張は、Project Kuiperの展開にも少なからず影響を与える可能性があります。
空の覇権争いが本格化
ジェフ・ベゾス氏は2021年にアマゾンCEOを退任しましたが、ブルーオリジンを通じて宇宙事業に深く関与しており、今回の打ち上げはeコマースと宇宙産業の融合を象徴する出来事とも言えます。今後、Kuiper衛星の運用状況や商用展開の進捗次第で、Starlinkとの競争がさらに加熱する見込みです。