建設現場の施工は、長い間「型枠を組み、鉄筋を配置し、コンクリートを打設し、養生し、型枠を解体する」という流れを前提としてきました。建物、擁壁、基礎、土木部材、駅舎、インフラ構造物の多くは、この工程の上に成り立っています。
しかし、人手不足、技能者の高齢化、地方インフラの老朽化、夜間施工の制約、災害復旧のスピード要求が高まるなかで、「型枠を現場で一から組む」こと自体が大きな負担になりつつあります。特に小規模な駅舎、待合所、設備棟、擁壁、ベンチ、公共トイレ、災害復旧用構造物のように、短時間で設置したい構造物では、現地作業をどこまで減らせるかが重要になります。
そこで注目されているのが、建設3Dプリンティングです。
建設3Dプリンティングとは、専用のモルタルやコンクリート系材料を、ロボットアームや大型3Dプリンターで積層し、建築・土木部材を造形する技術です。現場で型枠を組む代わりに、工場や現場近くで部材を出力し、必要に応じて鉄筋やコンクリートで補強し、現地で短時間に組み立てる施工方法が広がりつつあります。
象徴的な事例が、JR紀勢本線「初島駅」の3Dプリント駅舎です。ABBは、SerendixがJR西日本の初島駅で日本初の3Dプリント駅舎を建設し、ABBロボットを活用して新しい駅舎を一晩で組み立て、翌日の始発に間に合わせた事例をABB公式ニュースで紹介しています。
建設3Dプリンティングは、もはや「未来的な特殊技術」だけではありません。省人化、工期短縮、現地作業削減、地方インフラ更新、災害復旧の現実的な選択肢として見られ始めています。
建設3Dプリンティングとは何か
建設3Dプリンティングは、建築・土木向けの材料を3Dプリンターで積層し、構造物や部材を造形する施工技術です。一般的な樹脂3Dプリンターと違い、建設分野ではモルタル、セメント系材料、コンクリート系材料、特殊配合材料などを使います。
造形方法は、大きく以下のように整理できます。
| 方式 | 内容 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 現場造形型 | 現場に大型3Dプリンターやロボットを設置し、その場で壁や構造物を造形する方式 | 小規模建築、住宅、外構、景観施設、仮設構造物 |
| 工場製作・現地組立型 | 工場で部材を3Dプリントし、現場へ運んでクレーンなどで組み立てる方式 | 駅舎、設備棟、土木部材、夜間施工、地方インフラ更新 |
| ハイブリッド型 | 3Dプリントした外殻や部材に、鉄筋・コンクリート・仕上げ材を組み合わせる方式 | 構造性能や耐久性が必要な建築・インフラ部材 |
建設3Dプリンティングの特徴は、型枠を使わずに複雑な形状を造形しやすいことです。曲面、装飾、軽量化形状、配管スペース、設備開口などをデジタルデータから直接作ることができます。従来なら職人が型枠を加工する必要があった形状でも、3Dデータからロボットが積層していくため、設計自由度が高まります。
ただし、3Dプリンターが建物全体を完全自動で作るわけではありません。実務では、3Dプリントした部材に鉄筋やコンクリートを組み合わせ、構造性能、耐久性、防水性、設備、仕上げ、法規対応を満たす必要があります。
つまり建設3Dプリンティングは、「人を完全に置き換える魔法の技術」ではなく、「型枠・造形・部材製作の一部をロボット化する施工技術」と考えるべきです。
なぜ今、建設3Dプリンティングが重要なのか
建設3Dプリンティングが注目される背景には、建設業が抱える構造的な課題があります。
| 課題 | 建設3Dプリンティングで期待される効果 |
|---|---|
| 人手不足 | 型枠加工、造形、現地組立の一部をロボット化し、省人化につなげる |
| 技能者の高齢化 | 熟練技能に依存する現場作業を、デジタルデータと機械施工で補完する |
| 工期短縮 | 工場製作と現地短時間組立により、現場滞在時間を減らす |
| 地方インフラ老朽化 | 小規模駅舎、待合所、設備棟などを短工期・少人数で更新しやすくする |
| 夜間施工制約 | 鉄道・道路・港湾など、施工時間が限られる現場で現地作業を圧縮する |
| 災害復旧 | 仮設構造物や小規模インフラ部材を短期間で製作し、現地へ搬入する |
| 廃材削減 | 型枠材や端材を減らし、材料利用を効率化する |
国土交通省はi-Construction 2.0で、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上することを目指し、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」を柱として掲げています。建設3Dプリンティングは、この施工のオートメーション化と相性が良い技術です。
建設業では、これまでICT施工、BIM/CIM、ドローン測量、点群データ活用、遠隔臨場などが進んできました。次の段階では、取得した3Dデータや設計データを、施工そのものにつなげることが重要になります。建設3Dプリンティングは、3Dデータを「見る・管理する」だけでなく、「造形する・施工する」方向へ広げる技術といえます。
初島駅が示した「夜間施工×3Dプリント」の可能性
建設3Dプリンティングが実用段階に近づいていることを示す事例が、和歌山県有田市のJR紀勢本線「初島駅」です。
セレンディクスは、JR西日本グループと共同で、初島駅において3Dプリンター技術を用いた駅舎の建設を完了し、新駅舎の利用を開始したと公式発表しています。新駅舎は面積9.9平方メートルの鉄筋コンクリート造平屋建てで、2人掛けベンチ、券売機、簡易ICカード改札機を備える施設として紹介されています。
この事例で重要なのは、単に「3Dプリントで駅舎を作った」ことではありません。鉄道施設特有の夜間施工制約の中で、現地での躯体組み上げを短時間化した点です。
セレンディクスの発表によると、初島駅は1948年に竣工した木造駅舎で運用されており、老朽化に伴う保守コストや維持管理の効率化が課題になっていました。線路に隣接する施設では、安全面から列車が走っていない夜間に作業する必要があり、従来の鉄筋コンクリート造駅舎では躯体設置に長い期間を要する可能性があります。今回のプロジェクトでは、終電から始発までの限られた時間で躯体工事を完了することが目標とされました。
初島駅の施工フローは、建設3Dプリンティングの実務的な価値を分かりやすく示しています。
| 工程 | 内容 | 省人化・短工期への効果 |
|---|---|---|
| 工場製作 | 協力工場で3Dプリント部材を製作 | 天候に左右されにくく、品質管理しやすい |
| 補強・一体化 | 3Dプリント部材に鉄筋やコンクリートを組み合わせる | 構造性能を確保しやすい |
| 分割搬送 | 複数パーツに分けてトラック輸送 | 現場搬入計画を立てやすい |
| 夜間組立 | 終電後にクレーンで部材を設置 | 鉄道運行への影響を抑える |
| 短時間施工 | 現地での躯体組み上げ時間を圧縮 | 夜間施工・省人化に直結する |
ABBの事例紹介でも、老朽化する鉄道インフラ、労働力不足、建設コスト上昇という背景の中で、JR西日本がSerendixの3Dプリント技術を活用し、ABBロボットによって新しい駅舎を一晩で組み立てたことが説明されています。
この事例は、建設3Dプリンティングの価値が「造形の珍しさ」ではなく、「現地作業をどれだけ短くできるか」にあることを示しています。
型枠前提の施工からロボット造形へ
従来のコンクリート施工では、型枠が重要な役割を担います。型枠を作り、支保工を組み、鉄筋を配置し、コンクリートを打設し、養生し、型枠を外す。現場では、この一連の工程に多くの人手、時間、材料、スペースが必要になります。
建設3Dプリンティングでは、デジタルデータに基づいてロボットが材料を積層するため、形状によっては型枠を大幅に削減できます。特に、曲面や装飾、複雑な外形を持つ部材では、型枠製作の負担が減ります。
ただし、すべての型枠が不要になるわけではありません。構造性能、鉄筋配置、コンクリート充填、接合部、防水、仕上げ、施工精度を考慮する必要があります。実務上は、3Dプリントした外殻部材を型枠のように活用し、内部に鉄筋やコンクリートを組み合わせる方式も考えられます。
建設3Dプリンティングによる施工思想の変化は、以下のように整理できます。
| 従来の現場施工 | ロボット造形・3Dプリント施工 |
|---|---|
| 現場で型枠を組む | 工場や現場近くで部材を造形する |
| 熟練作業者の加工・組立に依存する | 3Dデータとロボット制御で造形する |
| 複雑形状ほど型枠工数が増える | 複雑形状でもデジタルデータから直接造形しやすい |
| 現地作業が長くなりやすい | 現地では搬入・吊り込み・接合を中心にできる |
| 型枠材や端材が発生する | 型枠削減・廃材削減につながる可能性がある |
| 工程が天候に左右されやすい | 工場製作により品質管理しやすい |
つまり、建設3Dプリンティングは、プレキャスト、ロボット施工、BIM/CIM、施工自動化をつなぐ技術として位置づけると理解しやすくなります。
建設3Dプリンティングが向いている用途
建設3Dプリンティングは、すべての建築物や土木構造物にすぐ適用できるわけではありません。現時点では、用途を絞ることで効果が出やすくなります。
| 用途 | 活用イメージ | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 小規模建築・設備棟 | 駅舎の待合所、警備棟、管理棟、トイレ、倉庫、休憩所、防災備蓄庫 | 工場製作と短時間組立により、現地作業を削減 |
| 地方インフラの更新 | 老朽化した駅舎、待合所、公共トイレ、バス停、港湾施設、観光施設 | 限られた人員・予算でも更新しやすい |
| 災害復旧用構造物 | 仮設待合所、仮設トイレ、簡易設備棟、擁壁、道路附属物、避難施設 | 必要な部材を短期間で製作し、現地で早期設置 |
| 土木部材・外構部材 | ベンチ、植栽桝、擁壁パネル、階段、排水関連部材、景観部材 | 小ロット・複雑形状・地域デザインに対応しやすい |
| 夜間施工・短時間施工施設 | 鉄道、道路、空港、港湾、駅施設、料金所周辺施設 | 交通規制や営業停止時間を短縮 |
| 標準化しやすい構造物 | 同じ形状を複数拠点で展開する小規模施設 | 造形データを再利用し、設計・製作を効率化 |
小規模建築や設備棟では、工場で3Dプリントした部材を現地で組み立てることで、現場作業を短縮できます。駅舎、警備棟、管理棟、トイレ、休憩所、防災備蓄庫などは、比較的用途を標準化しやすく、建設3Dプリンティングとの相性が高い領域です。
地方インフラの更新では、老朽化した駅舎、待合所、公共トイレ、バス停、港湾施設、観光施設などへの応用が考えられます。施工人員や予算が限られる地域では、短工期・少人数施工の価値が高くなります。
災害復旧では、仮設構造物や簡易設備を短期間で用意する必要があります。3Dプリント部材を工場で製作し、現地へ運んで組み立てる方式は、復旧初動のスピード向上につながります。
KPIで見る建設3Dプリンティングの効果
建設3Dプリンティングの導入効果は、「3Dプリンターを使ったかどうか」ではなく、現場KPIで評価する必要があります。特に、省人化、現地作業削減、工期短縮、CO₂削減の観点で整理すると、実務判断に使いやすくなります。
| KPI項目 | 内容 | 改善に使えるポイント |
|---|---|---|
| 型枠削減率 | 従来工法と比べて削減できた型枠量 | 材料費、廃材、型枠工数の削減 |
| 現地作業時間 | 現場での施工・組立にかかった時間 | 夜間施工、交通規制、駅施設更新の短縮 |
| 組立時間 | 部材搬入から躯体組み上げまでの時間 | クレーン計画、作業員配置の最適化 |
| 搬入回数 | 部材・材料・機材の搬入回数 | 現場混雑、交通負荷、CO₂排出の削減 |
| 施工人員 | 現地で必要な作業員数 | 人手不足への対応、省人化効果 |
| 工場製作日数 | 3Dプリント部材の製作期間 | 量産性、標準化、納期管理 |
| 現地滞在日数 | 協力会社・施工班の現地滞在日数 | 宿泊費、移動費、管理コスト削減 |
| 廃材削減量 | 型枠材や端材などの削減量 | 環境負荷、処分費削減 |
| CO₂削減量 | 搬入回数、材料、廃材、工期短縮による削減 | 環境価値の可視化 |
| 品質ばらつき | 部材寸法や仕上がりのばらつき | ロボット造形による品質安定化 |
| 再利用可能データ率 | 造形データを次案件に流用できる割合 | 設計・製造の標準化 |
重要なのは、3Dプリンティングを「珍しい工法」として評価するのではなく、「型枠をどれだけ減らしたか」「現地作業を何時間短くしたか」「何人で施工できたか」「搬入回数を何回減らしたか」という現場KPIで評価することです。
初島駅のような夜間施工では、現地作業時間の短縮が大きな価値になります。鉄道、道路、港湾のように施工時間そのものが制約になる現場では、3Dプリント部材の材料費だけでなく、交通規制、夜間作業、人員配置、営業影響、現地滞在日数を含めた総合コストで評価する必要があります。
APEX視点:点群・BIM/CIM・ロボット施工をつなぐ
APEXのように、ドローン、UAV LiDAR、SLAM、点群データ、BIM/CIMに強みを持つ企業にとって、建設3Dプリンティングは単独の施工技術ではなく、3Dデータ活用の出口として捉えることができます。
| 工程 | APEXが関与しやすい領域 | 内容 |
|---|---|---|
| 現況把握 | ドローン、UAV LiDAR、SLAM、点群計測 | 既存構造物、周辺空間、搬入経路、施工余裕を3Dで把握 |
| 設計・干渉確認 | BIM/CIM、点群比較 | 新設部材の設置位置、既存インフラとの干渉、維持管理動線を確認 |
| 造形データ化 | BIM/CIMモデル、3Dモデル変換 | 材料特性、積層方向、分割位置、搬送可能サイズを考慮して造形データへ変換 |
| 工場製作 | ロボット造形、品質管理 | 天候に左右されにくい環境で3Dプリント部材を製作 |
| 現地組立 | 点群による施工シミュレーション | クレーン設置、搬入、吊り込み、接合を短時間で実施 |
| 維持管理 | 点群・BIM/CIM台帳 | 完成後の維持管理、補修、更新計画にデータを活用 |
この流れにより、APEXが持つ3D計測技術は、単なる測量や点群納品にとどまらず、ロボット施工や建設3Dプリンティングの前工程として活用できます。
既存の駅舎、擁壁、法面、橋梁周辺、道路附属物、港湾施設などを3D計測し、その点群をもとにBIM/CIMで新設部材を設計します。さらに、ロボット造形に適したデータへ変換し、工場で部材を製作し、現地で短時間に組み立てる流れを作ることができます。
APEX向けに考えると、建設3Dプリンティングは以下のようなサービス展開と相性があります。
- 老朽化した小規模インフラの現況点群取得
- 駅舎・設備棟・擁壁・外構部材の3D設計支援
- 3Dプリント部材の搬入・吊り込みシミュレーション
- 点群とBIM/CIMによる干渉確認
- 完成後の維持管理用3D台帳作成
- 災害復旧用構造物の標準モデル化
建設3Dプリンティングは、単体で使うよりも、点群、BIM/CIM、ロボット施工、プレキャスト、施工シミュレーションと組み合わせることで価値が高まります。
導入時に注意すべきポイント
3Dプリントだけで完結すると考えない
建設3Dプリンティングは、造形工程を自動化する技術ですが、設計、構造、安全、法規、施工計画、運搬、接合、仕上げ、維持管理は別途検討が必要です。3Dプリンターだけで建物が完成するわけではありません。
特に公共施設やインフラでは、建築基準、耐久性、耐震性、火災安全、防水、メンテナンス性を確認する必要があります。
部材の分割と搬送を最初から設計する
工場で大きな部材を出力しても、現場へ運べなければ意味がありません。トラックに載るサイズか、道路幅や高さ制限に問題はないか、クレーンで吊れる重量か、現地での設置順序は適切かを設計段階で確認する必要があります。
初島駅のように複数パーツに分けて製作し、現地で組み立てる方式では、分割位置と接合部の設計が重要になります。
造形データと施工データを連携する
3Dプリント用データ、BIM/CIM、点群、施工計画、品質記録が別々に管理されると、後から検証しにくくなります。
どのデータからどの部材を出力したのか、材料ロット、製作日、補強方法、検査結果、現地組立日時、接合部の施工記録を残しておくべきです。
現場施工の安全計画を省略しない
現地作業が短くなるほど、作業は高密度になります。短時間で搬入、吊り込み、設置、固定を行うため、クレーン計画、交通規制、誘導員配置、作業半径、夜間照明、安全確認が重要です。
3Dプリント部材を使っても、現場安全計画はむしろ精密に設計する必要があります。
コスト比較は材料費だけで見ない
3Dプリント部材は、単純な材料費だけで比較すると従来工法より高く見える場合があります。
しかし、評価すべきなのは、型枠工数、現地作業時間、夜間規制、搬入回数、施工人員、廃材処理、工期短縮、営業停止時間の削減を含めた総合コストです。
特に鉄道、道路、港湾のように「施工時間そのものが高コスト」な現場では、短時間施工の価値が大きくなります。
標準化できる用途から始める
建設3Dプリンティングは、毎回まったく異なる構造物を作るよりも、標準化できる用途から始めるほうが導入しやすくなります。駅舎、待合所、公共トイレ、設備棟、外構部材、ベンチ、防災備蓄庫などは、設計テンプレートや造形データを再利用しやすい領域です。
標準化できれば、造形データ、部材分割、搬送計画、接合方法、品質確認手順を再利用でき、案件ごとの設計・製作コストを下げやすくなります。
現場で使える導入チェックリスト
建設3Dプリンティングを検討する際は、次の項目を整理すると実務に落とし込みやすくなります。
- 対象は駅舎、待合所、設備棟、トイレ、土木部材、災害復旧用構造物のどれか
- 現場施工時間を短縮する必要があるか
- 夜間施工や交通規制の制約があるか
- 型枠工数や型枠廃材を削減したいか
- 同じ形状の部材を複数作る可能性があるか
- 工場製作と現地組立のどちらが向いているか
- 部材をトラックで搬送できるサイズか
- クレーンで吊れる重量か
- 現況点群を取得して干渉確認しているか
- BIM/CIMモデルから造形データへつなげられるか
- 分割位置と接合部を構造的に確認しているか
- 現地組立の作業時間をシミュレーションしているか
- 型枠削減率、現地作業時間、施工人員、搬入回数をKPI化しているか
- 維持管理や補修時のデータを残す設計になっているか
- 造形データ、品質記録、施工記録を一元管理できるか
- 将来の横展開を見据えて標準モデル化できるか
このチェックリストの目的は、3Dプリンターを使うこと自体ではありません。現場作業をどこまで減らし、品質と安全をどう確保し、省人化と工期短縮をどう実現するかを判断することです。
まとめ
建設3Dプリンティングは、特殊な実験技術から、省人化施工の実用技術へ進みつつあります。型枠を前提とした現場施工から、ロボットで部材を造形し、現地で短時間に組み立てる施工へ移行することで、工期短縮、現地作業削減、人手不足対策、地方インフラ更新、災害復旧への活用が期待できます。
JR初島駅の3Dプリント駅舎は、この変化を分かりやすく示す事例です。部材を工場で3Dプリントし、鉄筋とコンクリートで補強し、現地では終電から始発までの限られた時間に組み立てる。これは、建設3Dプリンティングの価値が「造形の珍しさ」ではなく、「現地施工をどれだけ短縮できるか」にあることを示しています。
今後、建設3Dプリンティングの評価軸は、型枠削減率、現地作業時間、組立時間、搬入回数、施工人員、CO₂削減といったKPIへ移っていきます。3Dプリンターを導入したかどうかではなく、現場の制約をどれだけ減らせたかが重要です。
APEXが持つドローン、UAV LiDAR、SLAM、点群、BIM/CIMの技術は、建設3Dプリンティングの前工程と相性があります。現況を3D計測し、BIM/CIMで設計し、造形データへ変換し、ロボットで部材を作り、現地で短時間に組み立てる。この流れが確立すれば、建設現場は「型枠前提」から「ロボット造形前提」へ進化していくでしょう。


