画像出典: Impress Watch
国内5社がセキュリティトークンのクロスボーダー取引実証を実施
SBI証券、大和証券、SBI Digital Markets、Penguin Securities、BOOSTRYの5社は、国内で発行・管理されるセキュリティトークン(ST)の将来的なクロスボーダー流通を見据えた実証プロジェクトを実施し、その成果を発表した。本プロジェクトでは、海外証券会社との取引においてパブリックブロックチェーン「Ethereum(イーサリアム)」およびステーブルコイン「USDC」を活用する構成を前提に、システム面・法務面・業務面の検証が行われた。
発表内容の要点
- 国内発行のセキュリティトークンについて、海外証券会社との取引時にイーサリアムとUSDCを活用する実証プロジェクトを完了
- 国内の権利の安定性を確保しながら、パブリックブロックチェーンの相互運用性・グローバル接続性を活かせる「新たな決済・移転インフラの可能性」を確認
- 金融機関がパブリックブロックチェーンを活用するうえでの実務論点を整理し、関係当局や自主規制機関との議論を実施
- 今後は社債型STの制度上の課題や、不動産STなど他アセットへの展開可能性も含めて検討を継続する方針
- クロスボーダー流通の制度・実務整理、原簿管理・権利移転のあり方、ステーブルコイン決済実務の高度化が継続議論のテーマとして挙げられた

セキュリティトークンとは何か
セキュリティトークン(ST)とは、株式や社債、不動産などの有価証券をブロックチェーン技術を用いてデジタル化したものを指す。従来の有価証券と異なり、ブロックチェーン上で発行・管理されるため、取引の透明性向上や決済の効率化、24時間365日の取引可能性といったメリットが期待されている。日本国内では2020年の金融商品取引法改正により法的な位置づけが明確化され、以降、不動産や社債を裏付けとしたセキュリティトークンの発行事例が増加している。
パブリックブロックチェーン活用の意義
今回の実証プロジェクトで注目すべき点は、金融機関がパブリックブロックチェーンであるイーサリアムを活用した点にある。従来、金融機関がブロックチェーン技術を導入する際には、参加者を限定したプライベートブロックチェーンやコンソーシアム型ブロックチェーンが選択されることが多かった。これは、取引の秘匿性やガバナンスの観点から、参加者を特定できる閉じたネットワークが好まれてきたためである。
一方、パブリックブロックチェーンは誰でも参加可能なオープンなネットワークであり、世界中の参加者と相互運用できるグローバル接続性が最大の強みとなる。今回の実証では、この特性を活かしつつ、国内の権利の安定性を確保する仕組みを検証したことで、クロスボーダー取引における新たな決済・移転インフラの可能性が示された。
ステーブルコインUSDCの役割
本プロジェクトでは決済手段としてステーブルコイン「USDC」が採用された。USDCは米ドルに価値が連動するステーブルコインであり、Circle社が発行している。価格変動が激しい一般的な暗号資産と異なり、法定通貨と1対1で価値が裏付けられているため、決済手段としての安定性が確保される。国際的な証券取引においては、従来の銀行送金による決済では数日を要することも珍しくないが、ステーブルコインを活用することで即時決済が可能となり、資金効率の大幅な改善が期待できる。
ただし、日本国内においてはステーブルコインの法的な取り扱いについて2023年の資金決済法改正により一定の整理が進んだものの、実務面での運用ルールはまだ発展途上にある。今回の実証で得られた知見は、今後のステーブルコイン決済実務の高度化に向けた重要な基盤となると考えられる。

実証プロジェクトの参加企業
本プロジェクトには、国内大手証券会社であるSBI証券と大和証券に加え、SBIグループのデジタル資産関連子会社であるSBI Digital Markets、シンガポールを拠点とするPenguin Securities、そしてセキュリティトークンの発行・管理プラットフォームを提供するBOOSTRYが参加した。BOOSTRYは野村ホールディングスとSBIホールディングスの合弁会社として2019年に設立され、国内のセキュリティトークン市場において中核的な役割を担っている。このように、国内の主要金融機関とブロックチェーン技術に精通した企業が連携したことで、実務に即した多角的な検証が可能となった。
今後の展開と課題
5社は今後、社債型セキュリティトークンの制度上の課題や、不動産セキュリティトークンなど他のアセットクラスへの展開可能性についても検討を継続する方針を示している。特に、クロスボーダー流通における制度・実務の整理、関係者間の運用ルールの整備、原簿管理・権利移転のあり方、ステーブルコイン決済実務の高度化については、今後の市場拡大に向けた継続的な議論が必要なテーマとして挙げられた。
日本のセキュリティトークン市場は、2024年時点で発行残高が1,000億円を超える規模に成長しているとされるが、現状では国内取引が中心となっている。今回の実証プロジェクトで得られた知見が、将来的なクロスボーダー取引の実現に向けた制度整備や市場インフラの構築に貢献することが期待される。グローバルな資本市場との接続が実現すれば、海外投資家からの資金調達や、日本の投資家による海外セキュリティトークンへのアクセスが容易になり、市場の流動性向上につながる可能性がある。
参考元: Impress Watch





