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建設ロボットは“買う”から“使う”へ:RaaSが下げる自動化導入のハードル

建設現場で稼働する墨出しロボットのイメージ(Image Source: Dusty Robotics)
建設現場で稼働する墨出しロボットのイメージ(Image Source: Dusty Robotics)

建設ロボットの導入には、大きな期待があります。墨出しロボットが床に施工図を描き、測量ロボットが出来形を確認し、現場巡回ロボットが夜間や休日に点検し、資材搬送ロボットが人手不足を補う。こうしたロボットは、建設現場の省人化、品質安定、安全性向上に役立つ可能性があります。

一方で、建設会社がロボットを導入するときには、いくつもの壁があります。ロボット本体の購入費、現場ごとの設定、操作教育、保守点検、故障時対応、通信環境、保管場所、現場終了後の稼働率などです。高価なロボットを購入しても、特定の現場でしか使えない、次の現場に合わない、担当者が異動して使われなくなる、というリスクもあります。

そこで注目されているのが、RaaSです。

RaaSとは、Robotics as a Serviceの略で、ロボットを購入資産として所有するのではなく、必要な期間や用途に応じてサービスとして利用するモデルです。クラウドサービスのように、ロボット本体、ソフトウェア、保守、運用支援、教育、データ管理をセットで提供する考え方です。

RaaS市場は成長が見込まれており、Research and MarketsのRobotics as a Service Market Report 2026では、RaaS市場が2025年の267.2億ドルから2026年には320.8億ドルへ成長すると説明されています。Global Market InsightsのRobotics as a Service Market Sizeでも、2026年から2035年にかけてRaaS市場の拡大が予測されています。

建設ロボットは、これから「買うもの」から「必要なときに使うサービス」へ変わっていく可能性があります。

建設ロボットRaaSとは何か

建設ロボットRaaSとは、建設現場で使うロボットを、購入ではなくサービス契約として利用するモデルです。ロボット本体を所有するのではなく、一定期間、特定用途、現場単位、作業量単位で利用し、必要に応じて運用支援や保守を受けます。

従来のロボット導入では、建設会社がロボットを購入し、自社で保守し、社員に操作教育を行い、現場ごとに調整する必要がありました。RaaSでは、ロボットメーカーやサービス事業者が、機材、ソフトウェア、サポート、現場設定、データ管理をまとめて提供します。

項目購入モデルRaaSモデル
初期費用高くなりやすい月額・日額・案件単位で抑えやすい
所有者建設会社ロボット事業者・サービス提供者
保守自社対応または保守契約サービスに含まれる場合が多い
教育自社で運用体制を構築提供者がトレーニング・現場支援
現場調整自社で設定・検証提供者が設定支援するモデルもある
稼働率リスク自社が負担必要な期間だけ利用しやすい
技術更新買い替えが必要サービス側でアップデートされやすい

建設分野向けのRaaSについて、DirectIndustryの寄稿記事では、RaaSが物流分野を起点に広がり、建設のような業界でも導入リスクを下げるモデルになり得ると説明されています。同記事では、RaaSは高性能なツールをオンデマンドで使えるようにし、CAPEXを抑えることで新しい市場を開く可能性があると整理されています。

なぜ建設ロボットにRaaSが必要なのか

建設業では、現場ごとに条件が大きく変わります。同じロボットでも、オフィスビル、倉庫、住宅、橋梁、トンネル、プラント、地下施設では、動かし方も必要な設定も異なります。

ロボットを購入して自社保有する場合、以下のような課題が出やすくなります。

導入課題現場で起きやすい問題
初期投資が大きいPoC前に購入判断が必要になり、導入ハードルが高い
稼働率が読みにくい現場が終わると次に使える現場がない場合がある
現場調整が必要ルート、図面、通信、障害物、作業時間を毎回調整する
操作教育が必要担当者が変わると使えなくなる可能性がある
保守が負担故障時対応、部品交換、ソフト更新が必要
技術進化が早い購入後に新型や新機能が出ると陳腐化しやすい
ROIが見えにくい使用頻度が低いと投資回収が難しい

RaaSは、こうした課題を軽減するモデルです。まず短期間で試し、効果が見えた作業から利用範囲を広げることができます。購入前提ではなく利用前提にすることで、建設会社は自動化を小さく始めやすくなります。

Fortune Business InsightsのRobots-as-a-Service市場レポートでは、RaaS市場が2026年の33.1億ドルから2034年に165.4億ドルへ拡大すると予測されており、ロボットを所有するのではなくサービスとして使う流れが広がっていることが分かります。

RaaSが向いている建設ロボット

建設ロボットRaaSは、すべてのロボットに同じように適しているわけではありません。RaaSと相性が良いのは、現場ごとに短期間で使う作業、専門オペレーションが必要な作業、機材の稼働率が読みにくい作業です。

ロボット種類RaaSに向く理由主な活用場面
墨出しロボット案件ごとに必要期間が限られ、図面データ連携が重要オフィス、倉庫、マンション、病院、商業施設
測量ロボット高価な機材と専門設定が必要出来形測量、進捗確認、橋梁・土木現場
現場巡回ロボット夜間・休日など必要時間が限定される警備、進捗記録、安全確認
資材搬送ロボット現場レイアウトと搬送量により効果が変わる大型施設、倉庫、工場、病院建設
清掃ロボット仕上げ段階や施設内で定期運用しやすい竣工前清掃、床清掃、施設管理
点検ロボット専門用途で保守・解析支援が必要下水道、トンネル、共同溝、プラント
ドローン・ロボット連携機材更新と操縦・解析支援が重要進捗撮影、測量、点検、巡回

たとえば、墨出しロボットは、毎日すべての現場で使うとは限りません。床が仕上がったタイミング、施工図が確定したタイミング、一定区画ごとに使うものです。そのため、購入よりも案件単位・期間単位で使うほうが合理的な場合があります。

LayoutBotsの自律墨出しロボットサービスでは、床に施工図を直接印字するロボットをサービスとして提供する形が示されており、現場での無料デモや専門サポートを打ち出しています。

RaaSで変わる導入プロセス

RaaSが普及すると、建設ロボットの導入プロセスは「購入判断」から「利用判断」へ変わります。

従来は、ロボットを購入する前に、機種選定、予算化、稟議、保守契約、操作教育、現場検証を行う必要がありました。RaaSでは、まず特定現場でサービスとして試し、効果が出たら利用範囲を広げる流れが取りやすくなります。

従来の購入型導入RaaS型導入
高額な購入判断が必要小さなPoCや案件単位で試せる
自社で操作教育が必要サービス事業者が教育・支援を提供
保守体制を自社で考える保守・修理・更新をサービス側が担う
稼働率リスクを自社が負う必要な期間だけ使いやすい
現場ごとの調整が負担現場設定支援を受けやすい
ROI算定が難しい現場ごとのコストと効果を比較しやすい

RaaSの実務的な価値は、ロボット導入を「大きな設備投資」から「現場単位の業務改善」に変えられることです。

CAPEXからOPEXへ:投資判断の変化

RaaSの大きなポイントは、CAPEXを抑えやすいことです。CAPEXとは設備投資のような初期投資、OPEXとは運用費のことです。

ロボットを購入する場合、初期投資としてまとまった費用が必要です。現場で十分に使えなかった場合、その費用は固定資産として残ります。一方、RaaSでは、利用期間や作業量に応じて費用を払うため、現場ごとの採算を見やすくなります。

観点購入モデルRaaSモデル
会計上の見え方初期投資・資産購入利用料・運用費
導入判断長期利用前提案件単位・期間単位で判断
リスク稼働率不足、陳腐化、保守負担利用費が継続的に発生
向いている会社複数現場で高頻度に使う会社まず試したい会社、現場ごとに使いたい会社
ROI計算長期回収が前提1現場・1作業単位で比較しやすい

建設会社にとって重要なのは、購入かRaaSかを二者択一で考えないことです。まずRaaSで試し、頻繁に使うロボットは購入する。逆に、使用頻度が低いロボットや技術進化が早いロボットはRaaSで使う。こうした使い分けが現実的です。

墨出しロボットRaaSの活用イメージ

墨出しは、建築現場で手間がかかる作業の一つです。施工図を見ながら、床に壁位置、設備位置、開口、仕上げラインなどを正確に示す必要があります。ミスがあると、後工程の手戻りにつながります。

墨出しロボットをRaaSで使う場合、以下のような流れが考えられます。

工程RaaSでの運用イメージ
図面準備施工図やBIMデータをロボット用データに変換
現場設定基準点、座標、作業範囲、障害物を確認
ロボット稼働床面に墨出し情報を自動印字
確認出力位置や印字内容をチェック
記録作業範囲、日時、出力データを記録
支払い作業日数、面積、案件単位で利用料を支払う

RaaSにより、建設会社はロボット本体を購入せずに、墨出し作業の一部を自動化できます。自社で専門人材を育成する前に、サービス事業者の支援を受けながら効果を確認できる点がメリットです。

現場巡回・点検ロボットRaaSの活用イメージ

現場巡回ロボットや点検ロボットも、RaaSと相性があります。

現場巡回ロボットは、夜間や休日に現場を巡回し、写真・動画・温湿度・異常音・侵入検知などのデータを取得できます。点検ロボットは、下水道、トンネル、共同溝、プラント、狭小空間などで、人が入りにくい場所の映像や点群を取得します。

ロボット用途RaaSで期待できる効果
夜間巡回警備・進捗記録・安全確認を必要期間だけ利用
進捗記録定期撮影や現場記録を自動化
点検業務専門機材と解析支援をセットで利用
災害後調査短期間だけロボットを投入し、危険箇所を確認
施設引渡し前確認清掃・巡回・記録作成を一時的に自動化

点検ロボットは、高価なセンサーや専門解析が必要になることがあります。RaaSであれば、ロボット本体だけでなく、解析、報告書、保守、オペレーター支援まで含めて利用できる可能性があります。

資材搬送・清掃ロボットRaaSの活用イメージ

資材搬送ロボットや清掃ロボットは、建設現場だけでなく、工場、倉庫、病院、商業施設、物流施設の建設・運用段階でも活用できます。

資材搬送ロボットは、内装材、工具、部材、設備機器を決められた場所へ運ぶ用途に使えます。ただし、現場レイアウトが日々変わるため、購入しても常に使えるとは限りません。RaaSであれば、搬送需要が大きい工程だけ使うことができます。

清掃ロボットも、竣工前清掃や施設運用段階で使いやすいロボットです。特定期間だけ清掃作業を自動化したい場合、RaaSは導入しやすいモデルになります。

用途購入よりRaaSが向く場面
資材搬送大型現場や特定工程で搬送量が一時的に増える場合
施設内搬送病院・工場・物流施設などで運用開始前に試したい場合
清掃竣工前や引渡し前に短期間だけ使いたい場合
巡回夜間・休日など限られた時間帯で使いたい場合
点検専門機材を必要な案件だけ使いたい場合

RaaS導入で確認すべき契約・運用項目

RaaSは便利なモデルですが、契約内容を確認しないまま使うと、期待した効果が出ない場合があります。

確認項目見るべきポイント
料金体系月額、日額、作業量、面積、稼働時間、成果物単位のどれか
保守範囲故障時対応、代替機、部品交換、定期点検が含まれるか
教育操作教育、現場立ち上げ支援、マニュアルが提供されるか
現場調整図面変換、座標設定、ルート設定、通信設定を誰が行うか
データ所有権ロボットが取得した写真、点群、ログ、帳票の所有者は誰か
セキュリティクラウド接続、現場データ、認証、アクセス権が管理されているか
稼働保証稼働率、停止時対応、返金条件、サポート時間はどうなっているか
保険・責任接触、破損、事故、第三者損害時の責任分担はどうなるか
解約条件短期利用、延長、途中解約、現場変更に対応できるか

建設現場では、ロボットが図面、現場写真、点群、施工データを扱う場合があります。そのため、RaaS契約では、データ管理とセキュリティも重要です。

KPIで見る建設ロボットRaaSの効果

建設ロボットRaaSの導入効果は、「ロボットを借りたかどうか」ではなく、現場コスト、作業時間、教育負担、保守負担、ROIで評価する必要があります。

KPI項目内容改善に使えるポイント
初期投資削減額購入モデルと比べて抑えられた初期費用導入ハードルの低下
利用日数実際にロボットを使った日数稼働率と費用対効果の確認
1現場あたりコストRaaS利用料、教育、調整、支援費を含む総コスト購入・外注との比較
1作業あたりコスト墨出し、測量、搬送、巡回など作業単位のコストROI算定
保守負担削減自社で対応しなくてよい保守作業の削減管理部門の負担軽減
教育時間操作習得や現場説明にかかった時間サービス支援の効果確認
作業時間短縮人手作業と比べた時間削減省人化効果の確認
外注費削減外部測量、巡回、墨出しなどの費用削減代替効果の評価
手戻り削減ロボット作業によるミス・再作業の削減品質改善
ROIRaaS利用料に対する削減効果継続利用判断

RaaSでは、ロボット本体の価格よりも、「その現場でいくら効果が出たか」が重要です。現場ごとにコストと効果を記録すれば、次の現場で利用すべきか判断しやすくなります。

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建設会社・ロボット事業者・発注者での活用イメージ

建設ロボットRaaSは、建設会社だけでなく、ロボット事業者や発注者にもメリットがあります。

関係者活用イメージ
建設会社初期投資を抑えて自動化を試し、効果がある作業から横展開
ロボット事業者機材販売ではなく、運用支援・データ・保守を含むサービスを提供
発注者自動化による品質記録、省人化、安全性向上を確認
協力会社必要な工程だけロボットを利用し、作業負担を軽減
現場監督者人員不足の工程にロボットを組み込み、工程を安定化
経営層CAPEXを抑えながら、ロボット導入の実績とROIを検証

RaaSは、建設会社がロボットを所有するかどうかではなく、現場の課題を解決できるかどうかを中心に判断できるモデルです。

導入時に注意すべきポイント

RaaSでも現場準備は必要になる

RaaSは、ロボット導入のハードルを下げますが、現場準備が不要になるわけではありません。図面データ、作業範囲、基準点、通信環境、搬入経路、安全ルールを整えなければ、ロボットは十分に動けません。

料金だけで比較しない

月額や日額が安く見えても、現場設定、教育、移動、データ処理、報告書作成、サポート費用が別になる場合があります。RaaSを比較するときは、総コストで見る必要があります。

データの扱いを確認する

ロボットが取得した写真、点群、図面変換データ、走行ログ、作業記録は、建設会社にとって重要な情報です。クラウド保存、アクセス権、データ削除、二次利用の可否を確認する必要があります。

現場作業員の受け入れが重要

ロボットは、現場の人が使いにくいと定着しません。RaaSであっても、作業員や職長が「何をしてくれるロボットなのか」「どこに注意すべきか」を理解する必要があります。

購入との使い分けを考える

すべてをRaaSにする必要はありません。頻繁に使うロボットは購入し、使用頻度が低いロボットや技術進化が速いロボットはRaaSで使うなど、使い分けが重要です。

現場で使えるRaaS導入チェックリスト

  • 対象ロボットは墨出し、測量、巡回、搬送、清掃、点検のどれか
  • 購入ではなくRaaSにする理由は初期投資、保守、教育、稼働率のどれか
  • 利用期間は日単位、月単位、案件単位、作業量単位のどれか
  • 図面データ、BIM/CIM、基準点、作業範囲を準備できるか
  • 現場の通信環境、電源、保管場所、搬入経路に問題はないか
  • 操作教育と現場立ち上げ支援は契約に含まれているか
  • 故障時の代替機、保守、サポート時間を確認しているか
  • ロボットが取得するデータの所有権と保存場所を確認しているか
  • 1現場あたりコスト、1作業あたりコストを計算するか
  • 初期投資削減、教育時間、作業時間短縮、外注費削減をKPIにするか
  • 継続利用、購入切替、別現場展開の判断基準を決めているか

このチェックリストの目的は、ロボットを借りることではありません。必要な現場で、必要な期間だけ、効果が出る形でロボットを使い、自動化導入のリスクを下げることです。

まとめ

建設ロボットRaaSは、ロボットを「購入資産」として所有するのではなく、「必要な時に使うサービス」として利用するモデルです。墨出しロボット、測量ロボット、現場巡回ロボット、資材搬送ロボット、清掃ロボット、点検ロボットのように、現場ごとに必要期間が変わるロボットと相性があります。

RaaSの価値は、初期投資を抑えることだけではありません。保守、教育、現場調整、技術更新、データ管理をサービスとして受けられるため、建設会社はロボット導入を小さく試し、効果が出た作業から広げやすくなります。

市場レポートでも、RaaSは今後の拡大が予測されています。Research and MarketsやGlobal Market Insightsのレポートでは、2026年以降もRaaS市場の成長が見込まれており、ロボットを所有から利用へ移す流れが広がっています。

今後のKPIは、初期投資削減、利用日数、1現場あたりコスト、保守負担、教育時間、ROI、外注費削減へ移っていきます。建設ロボットは「買うかどうか」ではなく、「どの作業で、どれだけ効果を出せるか」で判断する時代へ進んでいくでしょう。

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