米国でのTikTok禁止が目前に迫る中、最高裁はその是非をめぐる議論を金曜日に実施しました。この議論の焦点は、TikTokの中国親会社であるバイトダンスが米国事業を売却するか、それとも全面禁止を受け入れるかにあります。バイデン政権は国家安全保障上のリスクを理由にこの措置を求めていますが、バイトダンス側は、この法律がコンテンツ配信の自由を保障する憲法修正第1条に違反していると主張しています。
国家安全保障をめぐるTikTok禁止の行方
2024年春、バイデン大統領はTikTokの米国事業を2025年1月19日までに売却することを義務付ける法律に署名しました。政府は、TikTokのデータ収集が中国政府にユーザー情報を渡す可能性があるとして懸念を表明しています。一方、バイトダンスはこれらの懸念を過剰反応とし、法的根拠に欠けると反論しています。
この禁止措置が施行される場合、AppleやGoogleはTikTokをアプリストアで配信できなくなります。既存のユーザーは当面アプリにアクセス可能ですが、アップデートやサポートが受けられなくなるため、時間とともに使用不能になる可能性があります。専門家は、メンテナンスがない状態では、数ヶ月でアプリが利用不可能になると予想しています。
トランプ次期政権、施行延期を求める
2025年1月20日に予定されているトランプ次期大統領の就任を前に、トランプ側は期限の延期を求めています。トランプ陣営は、新政権が交渉の場を持つべきだと主張しています。しかし、金曜日の審理で、サミュエル・アリート判事は法律の一時停止や審議の時間を確保するための行政的措置が可能かどうかを議論しました。
これに対し、バイデン政権側の代理人であるエリザベス・プレローガー米国訴訟局長は、TikTokが第1修正条項の主張で勝訴する見込みがない限り、禁止の延期には反対する姿勢を示しました。また、TikTokのデータ利用に関するリスクを軽視すべきではないと強調しました。
VPNとコンテンツクリエイターが対応を準備
禁止措置が実行されると、米国に拠点を置くインターネットホスティングサービスやアプリストアでのTikTokの配信が違法となります。既存ユーザーの間では、**VPN(仮想プライベートネットワーク)**を活用して制限を回避する方法が検討されていますが、必ずしも信頼できる解決策ではないとの声もあります。
インターネットソサエティのシニアアドバイザーであるダン・ヨーク氏によると、人気のあるVPNがブロックされる可能性があり、接続速度が遅くなったり、不安定になったりするリスクがあるとしています。また、不審なVPNプロバイダーが悪用する危険性についても警告しています。
一方、TikTokを収入源としているコンテンツクリエイターたちは、他のプラットフォームへの移行を進めるなど、禁止後を見据えた対応を進めています。
プロジェクト・リバティ、TikTok米国事業の買収提案
この不透明な状況の中で、プロジェクト・リバティ(億万長者フランク・マッコート氏が率いる組織)がTikTokの米国事業を買収する正式提案を行いました。提案額は非公開ですが、マッコート氏は最大200億ドルの資金調達を確保しているとしています。ただし、提案はアルゴリズムを除いた米国事業に限定されています。中国政府はアルゴリズムを知的財産として保護しているためです。
「シャーク・タンク」の投資家ケビン・オレアリー氏も、この買収計画に参加を表明しており、さらなる注目を集めています。買収が成立すれば、TikTokの米国事業は独立運営され、ユーザーの信頼と安全を優先した運営が行われる予定です。
最高裁の決定は間近とされており、この審理の結果はTikTokだけでなく、テクノロジー業界全体に大きな影響を与える可能性があります。